こんにちは、マンドリン演奏家、また大学院博士後期課程でマンドリン音楽史を研究しているかなえもんです。
先日、国立西洋美術館で開催された、「西洋版画を視る―リトグラフ:石版からひろがるイメージ https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024lithography.html」と「内藤コレクション 写本―いとも優雅なる中世の小宇宙 https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024manuscript.html」を訪れました。
(写本の方の展示についてはこちら)
リトグラフ(lithograph 石版画)は、ギリシャ語「石(lithos)」を語源としている印刷方法で、水と油の反発を利用した化学的プロセスに基づいています。1798年ミュンヘンのアロイス・ゼネフェルダー(Alois Senefelder, 1771-1834)が楽譜や文書の印刷のために発明したとのことです。
19世紀には広く使用されていました。版を掘ったり削ったりさせるのではなく、平板の化学処理による印刷のため、クレヨン、ペン、筆など日常の道具で描くことができ、繊細なタッチの表現も可能なのが大きな特徴のようです。自由な表現が可能であることから、19世紀当時も実用的な複写のみならず、美術の表現方法として広まり、現在まで使用されているとのことです。[1]
私が研究している『イル・プレットロ』をはじめ、当時の専門誌もリトグラフで印刷されています。こうした印刷工程や、出版にかかる日数や費用、部数などの背景を理解するためにも、リトグラフについても勉強しようと思っていたところ、この展覧会を知り、非常に興味深く鑑賞しました。
『イル・プレットロ』では、その印刷技術の高さ、特に掲載楽譜や受賞曲の出版楽譜「鮮明な版(in nitida edizione)」(”IL PLETTRO„, 1909年第4年21号, p.4)、「10ページの鮮明な楽譜(10 pagine di nitida musica)」(I nostro Album-premio, 1911年第6年第4号, p.1)などしばしば宣伝されており、実際とても読みやすい楽譜になっています。
『イル・プレットロ』は、毎号1ページ目の題字部分に表紙絵が印刷されており、1914年のみ2色刷りが採用されています。同時期の専門誌でもリトグラフの技術は広く使用されています。たとえば、『イル・プレットロ』の創刊者ヴィッツァーリが創刊以前に主幹をした『ヴィータ・マンドリニスティカ』の表紙は、リトグラフの技術により、細かな線や陰影が再現され、まるで手描きのような質感が表現されています。
また、大手楽譜出版社リコルディ社の同時期の音楽専門誌の表紙もリトグラフで製作されており、専門誌としてのみならず、美術品としても評価されています。
自由な表現が可能であるとのことは知っていましたが、今回の展示では、繊細な表現や何度も重ね刷りされた色彩豊かな作品の数々に圧倒されました。
これからも引き続き勉強していきたいと思います。それではまた!
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